振り向いて欲しい
翌朝、目を覚ますとどうやって帰ってきたのか朧げでしかない。

うーん、タクシーに乗ったのかなぁ。
いや、乗ったな。
うん。
自己解決し、シャワーを浴びスッキリしたところで携帯のアプリが鳴る。

「おーい、目が覚めたか?二日酔いになってないか?」と。
そうだ、高坂くんと呑んだんだった。美味しいご飯についついお酒もすすんだ。

「大丈夫。今シャワー浴びて冴えてきたよ。昨日はありがとう。」
返信をするとすぐに着信がきた。

ビックリして通話ボタンを押してしまった。わぁ!と叫んでしまい、その声が聞こえたのかスマホから笑い声がもれる。

「元気そうだな。今日休みだろ。出かけない?」

なぜ?なぜ誘われてる?仕事帰りでもないのに。無言になってしまう私に痺れを切らし12時に迎えに行くから、と言い電話が切れてしまう。
家って知ってたっけ?また固まる私。
昨日タクシーで私が先に降りたんだ。
お金払ったっけ?
12時に来るって後1時間じゃん。
何が何だかわからないし、頭が回らないけど後1時間らしい私の時間はどんどん過ぎてしまう。

クローゼットから洋服を出し簡単にメイクした。高坂くんの隣に並べるような服なんてない。でもついいつもより明るいレモンイエローのカーデガンを羽織り表へ飛び出した。

すでにマンションの下には黒のRV車が止まっており隣には高坂くんが立っていた。
走り出す私にまた笑う彼。
最近よう笑うのを見るなーなんて考えてたらつまづいてしまった。よろける私にまた笑顔。

「さて、二日酔いを覚ますため中華粥食べに行こう!」と私を車に乗せ横浜へ向かう。

ますます頭が回らない…私は案外馬鹿なのかもしれない。なんでここにいるんだろう、とふと考えてると高坂くんが声をあげて笑う。

「サーヤマンはコロコロ表情変わるよな。昔からだけど面白い。」

昔から?私そんなに変わらないと思うんだけど。

「昔からみんなに声かけたくてウズウズしてる顔とかオレに話しかけられて挙動不審になりつつも笑顔になってたり。教科書見せてくれって頼んだ時も机をつけるか悩んでたよな。仲良い友達のところにすっ飛んでく姿はまさに飛ぶかのように嬉しそうで地に足がついてなさそうだったじゃん。」

何言ってるの?高坂くん。
私は高坂くんの周りにいてはいけないから離れていたのにどうしてそんなこと知ってるの?

「また顔に出てるぞ。こいつストーカーなのか?と思い悩んでるって顔が。」

「そんなことない」

即座に否定するが頭の中はごちゃごちゃ。
うん、お酒が残ってるんだわ。だから頭も回らないしもういいや。

中華街でお粥を食べ、ぶらぶらと散策。
会話が途切れても気にならない。
むしろ会話がなくても心地いい空気感。
それをなんて言うんだろう。
2人で公園でまったりするのも苦痛じゃない。
< 15 / 33 >

この作品をシェア

pagetop