振り向いて欲しい
でも高坂くんはどう思ってるんだろう。
やっぱり会話がないな、つまらないなと思わせてるよね。
昨日のタクシー代を払ってもう帰ろう。
そう思い声をかけようとすると「さて、帰るか」と言われる。
そうだよね。つまらなかったよね。貴重な休みに二日酔い覚ましに声までかけてくれて本当にいい人だ。
私たちは車に乗り東京へ戻ってきた。
マンションへ着くと私はお財布から5000円を抜いて渡す。
「今日はありがとうございました。これ昨日のタクシー代です。ご迷惑をおかけしました。」
そういい車を降りようとすると右手を掴まれビックリした。

「サーヤマンは昨日も今日つまらなかった?迷惑なんて何一つかけられてないけど。俺無理に話さなくていいんだって楽だったんだけどつまらない思いさせちゃった?ごめんな。」
そう言って謝られる。

「全然つまらなくなんてないよ。話さなくてもつまらなくなかったよ。話しても楽しいけど話さなくてもつまらなくないよ。でも高坂くんの話はいつも楽しいよ。でも話さない高坂くんもつまらないわけじゃなくて。私がつまらない人間っていうか、私がダメな人で退屈にさせちゃうって言うか。」

支離滅裂なことを言ってしまう。あー、馬鹿だ。言いたいことが全然わからない。私に分からないのに高坂くんには何言ってるのか分からないよね。自己嫌悪に陥る。

もう頭を下げて高坂くんに掴まれた手から逃れるようにするっと引くも掴まれたまま。もう帰りたいのに。この手を離して…。
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