振り向いて欲しい
9ヶ月になりお腹は突き出すように出てきた。
よく動き回る。時々むにゅっと動き踵が出てきた時にはびっくりした。突き破る?とさえ思った。夜中には胎動で起こされる日々。早く出てきたいの?といいながら、まだダメだよーとさすってあげる。
今日で退職。
産休も考えたが約束通り実家へ戻り産むこと、そのままそこで育てていくため退職となった。
お世話になった先輩や病棟の看護師さんへ挨拶にまわり仕事を終えた。
すでに引っ越し荷物はまとまっており明日業者が運んでくれる。
父はなんだかんだ言ってもこの2ヶ月心配なのか母についてきては荷物の整理を手伝ってくれたり重いものを持ってくれたりした。
引っ越し当日。
朝からバタバタと私の3年の生活が詰まったものを運び出していった。
実家へ戻ると2人は待ち構えており片付けはあっという間に終わった。
3人で買い物へ行き赤ちゃんのものを買い揃え始めた。
認めない、と言っていた父は乗り気でないが荷物がたくさんだから、お車を出してくれる。
母はウキウキと「最近のはすごいわねー」と買いあさる。
赤ちゃんはついこの前やっと男の子だとわかったばかり。道理で元気なはずだわ。すごいキックしてくるからサッカーかしら。あなたのお父さんはバレーボールだったけどね。
あっという間に出産準備も進み産まれるまであと2週間っていうところで遥加が遊びに来てくれた。
遥加の赤ちゃんはすでに歩いていて成長の速さに驚かされた。父も母もその姿にメロメロ。1年前の私も遥加の赤ちゃんを見ていつかは私も、と思ってなぁ。現実になるなんて思わなかったけど、と物思いにふけていると遥加は「このままでいいの?」と小声で聞いてきた。それは赤ちゃんの父親のことであることはわかってる。でも私は小さな声で「うん」としか言えなかった。遥加は「もう聞かないね。サーヤだけの赤ちゃんだね」と言ってくれた。ありがとう。
お昼を食べ眠たそうにする子供を抱きかかえ遥加は帰っていった。寝てくれると電車が助かるんだそうで今が帰り時だそう。逞しいなぁ。
遥加が帰り、私はソファでウトウトし始めた時、急に腰が重くなった。あれ?トイレでおしっこをしたが止まらない。あれ?止まらない??
あ…破水?
「おかあさーん!破水したみたいなの!」
大声を聞きつけ母が駆け寄る。
「痛みは??」
「少しくらい。」
産院へ電話すると破水なら来てください、と言われる。
父に乗せられ病院へ着くと同時にものすごく痛くなる…
「痛い、痛い…」
父がオロオロし始めた。
母は「大丈夫だから。波がおさまったら歩くわよ」と言う。なんて頼もしい。
なんとか駐車場から産院の中へ入るとすぐに内診してもらう。意外と進んでおりこのまま分娩室に行くことになった。
「痛いー、痛いー。はぁー、痛いなぁ、痛いなぁ」そればかりが口からこぼれ落ちる。
父はオロオロと何も手につかず廊下をうろうろしているであろう音が聞こえてくる。
母は腰をさすってくれ「赤ちゃん産まれたがってるね。出てきたがってるんだから頑張ってあげなきゃね」と声をかけてくれる。
痛みが最高潮を迎え波が無くなり痛いだけの時間が続く。もうダメだ、頑張れない。永遠に痛いのかも、と思ったところで母から「頑張りなさい。あなたがこの子をこの世に生み出してあげなさい!」と言われる。
私は最後の力を振り絞りいきんだ。
その時大きな産声が聞こえてきた。
その途端涙がとめどなく流れ落ちた。
「オギャー、オギャー」と元気な声が聞こえる。
廊下から父が「やったぞ!」叫ぶ声が聞こえる。
私が母になった。
よく動き回る。時々むにゅっと動き踵が出てきた時にはびっくりした。突き破る?とさえ思った。夜中には胎動で起こされる日々。早く出てきたいの?といいながら、まだダメだよーとさすってあげる。
今日で退職。
産休も考えたが約束通り実家へ戻り産むこと、そのままそこで育てていくため退職となった。
お世話になった先輩や病棟の看護師さんへ挨拶にまわり仕事を終えた。
すでに引っ越し荷物はまとまっており明日業者が運んでくれる。
父はなんだかんだ言ってもこの2ヶ月心配なのか母についてきては荷物の整理を手伝ってくれたり重いものを持ってくれたりした。
引っ越し当日。
朝からバタバタと私の3年の生活が詰まったものを運び出していった。
実家へ戻ると2人は待ち構えており片付けはあっという間に終わった。
3人で買い物へ行き赤ちゃんのものを買い揃え始めた。
認めない、と言っていた父は乗り気でないが荷物がたくさんだから、お車を出してくれる。
母はウキウキと「最近のはすごいわねー」と買いあさる。
赤ちゃんはついこの前やっと男の子だとわかったばかり。道理で元気なはずだわ。すごいキックしてくるからサッカーかしら。あなたのお父さんはバレーボールだったけどね。
あっという間に出産準備も進み産まれるまであと2週間っていうところで遥加が遊びに来てくれた。
遥加の赤ちゃんはすでに歩いていて成長の速さに驚かされた。父も母もその姿にメロメロ。1年前の私も遥加の赤ちゃんを見ていつかは私も、と思ってなぁ。現実になるなんて思わなかったけど、と物思いにふけていると遥加は「このままでいいの?」と小声で聞いてきた。それは赤ちゃんの父親のことであることはわかってる。でも私は小さな声で「うん」としか言えなかった。遥加は「もう聞かないね。サーヤだけの赤ちゃんだね」と言ってくれた。ありがとう。
お昼を食べ眠たそうにする子供を抱きかかえ遥加は帰っていった。寝てくれると電車が助かるんだそうで今が帰り時だそう。逞しいなぁ。
遥加が帰り、私はソファでウトウトし始めた時、急に腰が重くなった。あれ?トイレでおしっこをしたが止まらない。あれ?止まらない??
あ…破水?
「おかあさーん!破水したみたいなの!」
大声を聞きつけ母が駆け寄る。
「痛みは??」
「少しくらい。」
産院へ電話すると破水なら来てください、と言われる。
父に乗せられ病院へ着くと同時にものすごく痛くなる…
「痛い、痛い…」
父がオロオロし始めた。
母は「大丈夫だから。波がおさまったら歩くわよ」と言う。なんて頼もしい。
なんとか駐車場から産院の中へ入るとすぐに内診してもらう。意外と進んでおりこのまま分娩室に行くことになった。
「痛いー、痛いー。はぁー、痛いなぁ、痛いなぁ」そればかりが口からこぼれ落ちる。
父はオロオロと何も手につかず廊下をうろうろしているであろう音が聞こえてくる。
母は腰をさすってくれ「赤ちゃん産まれたがってるね。出てきたがってるんだから頑張ってあげなきゃね」と声をかけてくれる。
痛みが最高潮を迎え波が無くなり痛いだけの時間が続く。もうダメだ、頑張れない。永遠に痛いのかも、と思ったところで母から「頑張りなさい。あなたがこの子をこの世に生み出してあげなさい!」と言われる。
私は最後の力を振り絞りいきんだ。
その時大きな産声が聞こえてきた。
その途端涙がとめどなく流れ落ちた。
「オギャー、オギャー」と元気な声が聞こえる。
廊下から父が「やったぞ!」叫ぶ声が聞こえる。
私が母になった。