竜王様、ご飯の時間です and more ! 〜竜王様と転生メイドのその後〜
「………ライラはヴァヴェルを裏切った」
「はい」
「そんなライラを、女王は許すだろうか?」
「わかりません」
「女王の言う通り一人で行けば、捕まるかもしれない」
「それも想定内です」
「最悪の場合も考えられる」
「喜んで!」
「そんな危険を孕んでいるというのに、ライラ一人を行かせられると思うか?」
「行かないと薬草が手に入りません」
 どうやら行かせたくないっぽい竜王様と、どうしても行きたい私。平行線です。
「ライラ、ラファは貴女の身が心配なのですよ」
「私を信じて拾ってくださった竜王様やこの国のためなら、なんでもござれですよ!」
「頑固だね」
「頑固だな〜」
 インディゴ様の言葉にも頷かない私を見て、スプルース様とバーガンディーさんが噴き出しました。それにつられてか、それとも私に根負けしたのか、竜王様が深いため息をつきました。
「ライラが身の危険を感じた時、すぐに余を呼ぶことを約束できるか?」
「竜王様を、ですか?」
「そうだ」
 呼ぶのは簡単だけど、ヴァヴェルと竜王国、物理的にめっちゃ距離あるけど? そんな疑問が顔に出ていたんでしょう、竜王様が私の元に来て、手を取りました。
「指輪はどうした?」
「あ……お仕事で汚しちゃいけないので、チェーンで首から下げています」
 私は首に下げていたチェーンを引っ張り出し、指輪を見せました。竜王様から直々にいただいた貴重な指輪。外していいものかどうか判らなかったし、かといって指に嵌めっぱなしだとお仕事の邪魔になるしで考えた結果、こうして身に着けておくことにしたんです。チェーンから指輪を外した竜王様は、それをそのまま私の指に嵌めました。
「これには余の〝力〟の一部が込められている。指輪に願えば、余に伝わる」
「そうなんですね」
「ああ。だからこれは、絶対に外すな」
「わかりました」
「行かせたくはないが、ライラの気持ちと、この国とのことを考えて行かせることにする」
「ありがとうございます!」
「ただし、無茶はするな」
「もちろんです」
 なんとかお願いは聞き入れられて、私はヴァヴェルに行かせてもらえることになりました。
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