竜王様、ご飯の時間です and more ! 〜竜王様と転生メイドのその後〜
「トープさん!」
「ライラの元気な顔が見られて安心したけど、竜王様はいいのかい?」
「竜王様? はい! こちらに顔を出してきますって、ちゃんと断ってきました」
「そうかい。ならいいんだけど……。ああ、長旅で疲れただろう? これでも飲んで一息いれな」
 そう言うとトープさんは鍋からスープをひと掬いして、器に入れてくれました。
 休憩用のテーブルに置かれたそれは、トープさん特製のお味噌汁のようで、私がテーブルに着くと、出汁のいい香りがふわりと鼻をかすめました。
「いい匂い……!」
「ゆっくりお食べ」
「はーい! いただきます!」
「ライラには敵わないだろうけど、どうだい? あれから私なりに研究したんだよ」
「研究?」
 何を研究したんだろうと思いながら一口お味噌汁を口に含むと、以前よりも濃厚に感じる出汁の味。むむ? トープさん、出汁変えました? ……いや、出汁が変わったんじゃないなぁ。出汁の取り方、かな?
 とりあえず思ったことは。
「前よりも濃く、出汁の味を感じます。めっちゃ美味しい」
 シェフ! シェフを呼んでぇ〜……って目の前にいるわ。濃いだけでなく、洗練された上品な味。さすがプロの、本気の研究結果です。
「竜王様のお口に合うように、いろいろ海藻を試したんだよ」
「なるほど、海藻の種類でしたか」
 前世で言うところの、利尻なのか羅臼なのか的なやつですね。すごいなぁトープさん。そんなことまでこだわってるなんて。……あれ?
「竜王様は、最初の昆布モドキでも満足してらっしゃいましたよね?」
 私、そこらへんに落ちてた、干からびた海藻使ってましたよ。竜王様が召し上がるようになってからは、さすがに〝そこらへんに落ちてた〟ものではダメだから、わざわざ出汁用に海藻を乾燥させてましたけど、種類までは変えてなかったはずです。
「それが……、ライラが出て行ってからというもの、ほとんど口にしてくださらなくなってねぇ。あんなに毎日飲んでいらしたのに」
「そうだったんですか」
 トープさんが作ったお味噌汁なら、絶対私よりも美味しいはずなのに。竜王様ったら、毎日飲みすぎて飽きちゃったんじゃないの? しかしこのお味噌汁、トープさんが本気で研究した出汁だけあって、美味しすぎます。
「ぷはぁ〜! 美味しい!」
 もう一杯おかわり! と言いたいところです。
「そうかい、それはよかった」
「こんな美味しいお味噌汁でもダメだなんて」
 まったく、竜王様ってばどんだけワガママなんだか。……ん、待って。また私が竜王様の専属汁物係やるなら、これ、めっちゃハードル上がってない?

 ま、いっか。

 ポンコツメイド、これからも竜王城で頑張ります!
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