竜王様、ご飯の時間です and more ! 〜竜王様と転生メイドのその後〜
「ライラック殿たちが欲しがってる薬草エフェドラは、この、北の森の中に群生しています」
 そう言ってウェルド氏が地図上で森の場所を指し示してくれました。ヴァヴェル国の北の端に位置するその森の、しかもほぼ中央。確かこの森のある辺りは極寒地域で、住人も少ない場所という話を聞いたことがあります。森はかなり広く、女王様の住むこの都とほぼ同じくらいの面積のようです。そんなところに単身で行けるんでしょうか
「えぇ……」
「しかもこの森は普通の森ではないので、誰も近寄りませんしね」
 私、本当にヴァヴェル人だったのかな? と疑うレベルで初耳ばかりです。まあほとんどこのお城周辺から出たことないし、教養もなかったからなぁ。と、言い訳しておきます。しかしそんな過酷な場所に、単身で行けるんでしょうか? めっちゃ不安が募ってきたんですけど。
「ここ、別名『眠りの森』って言ってね、森の空気を吸うと永遠の眠りについちゃうの」
「永遠の眠り!?」
 それって、ほぼ『おしまいDeath』じゃない。
「そう。だから誰も行かないし、住まないの。まったく、邪魔でしかたない森よ」
「邪魔って……せっかく貴重な薬草(おたから)が群生しているというのに?」
「あら〜、だってうちの国ではほぼ価値のない雑草だもの」
「え? どうしてですか?」
「うちの国でも似たような病気が出るけど、そんな重症化しないし、放っていても治るんだもの」
 遺伝的な何かで、ヴァヴェル人が例の病に対応できてるということでしょう。なんならヴァヴェル人の血をもらってワクチン作りたいわ。って、そんな技術も知恵もないからできないけど。特に重い病気じゃないから、危険を冒してまでエフェドラを摘みに行かないってことですね。
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