竜王様、ご飯の時間です and more ! 〜竜王様と転生メイドのその後〜

寄り道

 私たちを乗せた馬車が都の外れにあるモーヴさんのお店『ティア・モーヴ』に着いたのは、お昼をかなり過ぎた頃でした。ランチタイムの看板が片付けられているので、数量限定のランチセットは売り切れて、モーヴさんたちは賄いを食べている頃でしょう。
「いきなり竜王様が現れたらモーヴさんびっくりしちゃうと思うんで、私だけで行ってきますね」
「わかった」
「すぐ戻ります」
 竜王様を残して私は一人、『ティア・モーヴ』に入って行きました。



「おじゃましま〜す」
「今日のランチは終わったよ。夜か、また明日来ておくれ」
 お客さんのいない店内に声をかけると、奥の厨房から返事が返ってきました。この声はモーヴさんです。
「えーと、今日はお客さんじゃなくてですねぇ。ちょっとご挨拶に……」
 挨拶というか、元気でしたよという報告というか。
 すると、厨房からバタバタと慌ただしい足音が聞こえたかと思うと、モーヴさんが姿を現しました。
「ライラ!?」
「ご無沙汰してます」
「海辺の村はどうしたんだい? まさか……?」
 近くの椅子に力なく座り込むモーヴさん。と、同時にサーッと顔色が変わっていきました。あ、これは悪い方向に想像してますね。
「あ、全然悲壮感はありませんよ! 問題ないですよ!」
「…………」
「結局見つかって、竜王城に戻ることになっちゃいましたけどね」
「えええ!? どういうことだい?」
 さらに驚くモーヴさん。動揺してるところに、さらに追い討ちかけてどうするのよ私。
 とにかく今は、モーヴさんに落ち着いてもらわないとです。私も近くにあった椅子に腰掛け、ここを出てから今までのことを話すことにしました。
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