竜王様、ご飯の時間です and more ! 〜竜王様と転生メイドのその後〜
 久しぶりなので、丁寧に出汁をとるところからやりましょうか。
 私の周りではすっかり定着した出汁用の昆布。表面のゴミをさっと取り除いたら水に漬けて、しばらくしたら中火にかける。沸騰直前で昆布を取り出したら出来上がり。澄んだ黄金色の、上品な出汁の完成です。
「あ〜いい香り。出汁だけで永遠に飲める」
 我ながら上手にできました。あとは、お野菜をいただいて適当に切って具材にし、味噌もどきを入れたら味噌汁のいっちょ上がり!
「う〜ん、ライラの味噌汁はやっぱり最高だね。私にはこんな味が出せないよ」
「ありがとうございます!」
 味見してもらったモーヴさんに褒めてもらいました。
 ぱぱっと一品できちゃったわけだけど、なんかこう、もっと作りたい。何を作ろうかな〜と、厨房の作業台周辺を物色していたら、モーヴさんが魚を捌いているところで目が止まりました。煮付けにするのか焼き魚にするのか、手早くアラの部分を落とし、切り身に分けていきます。アラの部分を捨てようとするので、思わず止めてしまいました。
「捨てないで〜! モーヴさん、その、魚の捨てる部分——頭とか骨のところとか、もらえます?」
「え、これかい? そんなもん、何するんだい?」
「それで出汁をとりたいんです」
「出汁を?」
 そう、昆布ばかりが出汁じゃない。魚のアラでもいいお出汁取れるし、骨に残った身なんかも食べられたりするんでめっちゃエコだしね。
「はい。美味しいんですよ」
「ああ。まあ、ライラが言うんだからきっと美味しいに違いないか。もっといるならそこに置いてあるから、好きに使いな」
「ありがとうございます!」
 モーヴさんが指したところにもアラが積んでありました。竜王城と違ってここには冷蔵庫がないので、傷んでないかとかを慎重に選ぶ必要があります。
「う〜ん、スプルース様にお願いして、ここにも冷蔵庫と冷凍庫を作ってもらおうかな」
 なんて図々しいことを考えつつ、使えるアラを探していたら、作業台の端っこに、カッチカチに乾燥した物体を発見。
「ん?」
 何これデジャヴ。昆布(もどき)を発見したのも、こんなシチュエーションだったなぁ……って、それはいいとして。一見、船のような形の木片のように見えるけど、匂いが魚。ちょっと硬いところにぶつけてみると、乾いた木のような音がする。でも、匂いは魚。つまり——これって、鰹節じゃね!?
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