竜王様、ご飯の時間です and more ! 〜竜王様と転生メイドのその後〜
 勉強の方は毎日の予習復習のおかげで、なんとかなりそうな気はしています。それよりなによりわたし的気がかりは、経験値の少ないダンスですよ。簡単なステップだけから成長して、簡単なターンまでできるようにはなりましたが、まだ軸がぶれて躓きそうになることもしばしば。特に疲れが溜まってくる週末なんかはもう、目も当てられません。疲れと、上手くいかない焦りで、ネガティブが復活してくることも。
「ヤバイヤバイヤバイ。本番でずっこけたらどうしよう」
「大丈夫ですよ。少し座って休みましょうか」
 ウィスタリアさんが椅子を用意してくれたので、ありがたく休憩させてもらいます。手渡された温かい飲み物を口に含むと、追い込まれていた気持ちが少し楽になりました。今日はおひとりさま練習だから、誰も被害者が出なくてよかったんだ。そうだそうだ。練習では間違えたっていいって、竜王様も言ってくれてたし。あの日の練習を思い出して、また落ち着きを取り戻しました。
「基本のステップは、落ち着いていればちゃんとマスターできていますから、あとは焦らないことでございますよ」
「間違えたらいけないという強迫観念がすごくて、それで緊張しちゃって」
「初めての場合は誰でもそうでございますね。そうですね……ステップばかり気になってしまいがちなので、リズムや、パートナーの動きに合わせることに意識を持って行ってはいかがですか? 竜王様とご一緒されている時のように」
「竜王様と一緒……」
 確かに言われてみれば、竜王様が練習に付き合ってくれてる時って、私は竜王様の動きに合わせてるだけな気がします。ステップが、体の動きに合わせてついてくる感じ。竜王様が上手く私をリードしてくれているのに乗っかってるだけです。
「そうか、相手に合わせるだけでいいのね」
「そうでございます」
 超超初心者の私がリードできるなんて、おこがましい考えこの上なしだわ。
「気が楽になりました」
「そうそう、その調子です。いつものライラ様らしくいきましょう」
「はい!」
 練習は頑張ってるんですもの。人事を尽くして天命を待つ気で臨みましょう。
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