地味同盟〜地味男はイケメン元総長〜
良く分からないけれど、日高くんはそのままマフィンを食べてくれる。
「まあ、美味いんじゃね?」
ぶっきらぼうな言い方だったけれど、一番食べて欲しい人が食べてくれて美味いと言ってくれた。
それが一番嬉しかった。
「良かった」
心の底から安堵して笑顔でそう言うと、日高くんがあたしをじっと見て固まる。
「どうしたの?」
「いや、何でも……」
何でもって感じじゃ無かったよね? と首を捻っていると、食べ終えた日高くんに聞かれた。
「明日も何か作って来てくれるんだよな?」
「……」
作って来てくれるか? じゃなくて、くれるんだよな? ですか。
それはつまり。
「自分の食事を改めるつもりはない、と?」
「やだね、面倒臭い」
「うぐぐ」
「で? 作らねぇの?」
ニヤニヤした顔で聞かれて腹が立ったけれど、毎日あのメニューを見せられれば作ってでも食べさせなきゃと思うのは分かり切っていた。
「作るわよ! だからちゃんと食べてよね!」
正直毎日作るのはちょっと、と思っていたけれど仕方がない。
あたしの精神安定の面で見てもこれは必要なことだった。
幸いなのは、このやり取りを見ていた花田くんが気を使って「俺たちの分は毎日じゃなくて良いからな?」と言ってくれた事だろうか。
一人分ならそこまで大変ではないかな?
そんな感じで、あたしは毎日日高くんに栄養のあるものを作ってくることになってしまった。
良かったのか悪かったのか。
それは良く分からないけれど……。