地味同盟〜地味男はイケメン元総長〜
「は? ちょ、待て待て!」

 そのまま塗ろうと思ったのに突然離れられてしまう。

「ちょっと、動かないでよ」

「傷の手当てだけだろ? 何で口にも塗るんだよ?」

「だって日高くんの唇カッサカサなんだもん!」


 軽く睨んで主張する。

 髪や肌は今すぐどうこう出来ないけれど、唇はこの軟膏で保湿が出来る。

 もうぶっちゃけてしまったし、やりたいことはやってしまいたい。


 あたしは開き直っていた。


 あたしの主張にはぁ~と溜息を吐いた日高くんは手のひらを差し出してくる。

「分かったよ。自分で塗るからそれ貸せ」

 軟膏を渡すと、付け慣れていないのかぎこちなく塗って返してくれた。


「それにしても、お前本当におかしいな。美容? そういうのに関しては状況も無視して突っ走るとか」

 状況までは無視しているつもりがないからちょっとムッとしたけれど、突っ走っちゃってる気はするので言い返せない。
< 60 / 600 >

この作品をシェア

pagetop