地味同盟〜地味男はイケメン元総長〜
 あたしはすぐ日高くんに渡すものを持って彼の席に急いだ。

 日高くんはいつも遅めに来るから朝のSHRまであまり時間がない。


「日高くん、おはよう。ちょっと渡したいものがあるんだけど、良い?」

「……眠いんだけど……」

 少しだけ顔を上げた日高くんは不満そうにあたしを見上げる。

 学校の中だからか、口調は地味男バージョンだ。


「すぐ済むから」

「……ここで言えば?」

「ちゃんと傷の様子も見たいからせめて顔上げて」

「んだよ、めんどくせぇ」

 最後の言葉はあたしにだけ聞こえるように小声で言っていた。

 それでもあくびをしながら顔は上げてくれる。


 口元の傷はちゃんと塞がっているみたいだ。

 変に盛り上がったりもしていないし、傷跡として残らなそうで安心する。
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