桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
こんな前向きな事を誰かに話したのはいつぶりだろう? 発作が頻繁に出るようになって、ずっと出来る事より出来ない事を考えるようになっていた。
父や母もそんな私の事を心配する事はあっても、無理してがんばれという事は一度もなかったから。
最初はこのまま気持ちを押し殺し、三年が過ぎるのを待つことだけなんだと思ってたの。けれどそうやって後ろ向きばかりでいるのはやめようって、もっと自分の本音と匡介さんに向き合うべきなんだって……
「……変わったな、杏凛は。いや、昔の君に戻ったというべきなのか?」
「昔の私……ですか ?」
懐かしそうに目を細めて私を見つめる匡介さん、彼の言う昔の私っていったいどういう事?
確かに私たちは親同士の付き合いもあり、子供のころからそれなりに顔を合わせる機会も多かった。だけどその度に匡介さんからジロリと睨まれてばかりで、居心地の悪さを感じていた記憶がある。
……そう言えば私はまだ匡介さんにその理由をきちんと聞いたことが無かった。
「ああ。昔の杏凛はとても活発な女の子で、俺はいつも君がどこかにいなくならないかとハラハラしながら見ていたからな」
「ええっ!?」
意外な告白に私は驚き、ここが静かなブックカフェだというのに大きな声を出してしまった。匡介さんが私を睨んでいたのは、そんな理由からだったの?