桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
だけどそんな事を聞く勇気はなく、私も同じように黙ってアイスティーのカップを口に運んだ。
一度聞いて答えてもらえなかったことをもう一度聞くには、その相手に嫌われないかという不安も付いてくる。以前の匡介さんは答える気は全くなさそうだったし……
あれから一度も匡介さんが同じような朝帰りをする事は無かったけれど、今でも私はあの夜の事が引っかかっている。
けれど、匡介さんはその事には触れず話題を少し変えた。
「杏凛、俺が君に対して過保護なのはきちんとした理由がある。今までもこれからも……俺はそれを変えるつもりはない」
もしかして私がさっき匡介さんに甘すぎると言ったことを気にしてるの? 確かに匡介さんの過保護っぷりは少し普通ではない気がしていたけど、何かワケがあったなんて。
「その理由はなんですか? 私にはそれを知る権利がありますよね」
「今の君には話せない。いや、このまま話さなくて済むのなら俺は間違いなくそうするつもりだ」
いつもより少しだけ……匡介さんの表情が険しい気がした。この人のこんな顔を見るのは、彼と出会って初めてかもしれない。
「……私のことなのに?」
「他の誰でもない、君の事だからだ」
はっきりと答えた匡介さん、これ以上頼んでもきっと彼は話してはくれないと思う。結婚して分かったことだけど、匡介さんは結構自分の決めたことは変えようとしない。
……分かったのは、彼が何かを隠すのは私の為だという事だけ。どんどん分からない事が増えているような気がするわ。