桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
契約結婚に希望を見つけて
匡介さんに手を繋がれたまま私は大人しく彼の後をついていく、今はそうすることが一番心が落ち着くような気がして……
結婚が決まったばかりの時は、彼の言動も考えも分からない事ばかりで常に一定の距離を取っていなければ安心できなかったのに。数か月一緒に暮らしただけで私の中の匡介さんのイメージは随分変わった。
強引そうな見た目なのに、匡介さんは私に触れる時とても優しい。私の病気を気にしてなのかもしれないけど、壊れ物でも扱うように丁寧だと思う。
「杏凛、無理はしていないか?」
「はい、ですがもう少しゆっくり歩いてもらえると助かります」
すぐに匡介さんは歩みのスピードを変えて、私の隣に移動する。こんな時、自分は十分すぎるほど大事にしてもらえてると実感するのだけど……
どうしても私なんかがそこまで匡介さんにしてもらえる理由が見つからない。
「だが君はまだ浮かない顔をしている、俺の所為なんだろう?」
「そんな事は……」
言われて気付く、ここ最近の私の悩み事はほとんど匡介さんに関する事だと。今まではもっと自分の事や病気についてや両親の事と色んなことを考えてたのに、いつの間にこんなに夫の事で頭がいっぱいになっていたのだろう。
契約とはいえ自分の夫となった彼が気になってるのか、それとも匡介さんだから気になるのか……
「……君にとって俺は物凄く我儘な夫なんだろうな、きっと」
私の顔を見ようとせず、独り言のようにそう呟いた匡介さん。匡介さんが我儘だって感じたことは無い、彼はいったいどうしてそう思ったのかしら?