桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
彼の言葉の続きを待つようにジッと見上げても、匡介さんからその理由を聞くことはできなかった。
この人の妻になっても何も気にしなくて済むように無関心でいるつもりだったのに、いつの間にか気になる事でいっぱいになっている。
「私と匡介さん、どちらが我儘かと言えば私なのではないでしょうか?」
「俺は君の行動を制限してばかりなのに?」
ああ、そういう意味での呟きだったのね。確かに匡介さんの私に対する過保護ぶりはちょっと普通ではないと思う。でもそれは私の病気の事を心配しての事で……
「そうですね、ですがそうなっているのも私に問題があるせいですし」
両親や鵜方先生からどのように話を聞いているのかは知らないけれど、責任感の強い匡介さんはこんなに過保護になるほど私を放ってはおけないのでしょう。
それが私の気持ちを複雑にさせるのだけど……
「そうじゃない。俺は杏凛の病気を、自分の都合よく……」
「……え? 都合よく、なんですか?」
声の低い匡介さんが小声になると上手く聞き取れない、何と言ったのかもう一度聞き返すと手首を少し強めに引っ張られる。
「こっちだ、杏凛」
並んだビルの一つの扉に匡介さんに手を引かれたまま入っていく。彼はまたそうやって誤魔化してしまう、やっと話してくれたであろうその本音を……