桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜

 複雑な気持ちでインコの赤ちゃんを見つめていると、その様子を黙ってみていた馬場(ばば)さんが匡介(きょうすけ)さんに近寄ってそっと耳打ちをする。
 ちょっと……仲が良いと言ってもいくらなんでも距離が近すぎるのではないかしら? 自分ではなく彼女が匡介さんの特別な人のように見えてとても不快だった。
 両手を握りしめて二人のそんな様子に気付かないふりをする、素直に嫌だと伝える事も出来ない契約妻という立場の自分が情けなかった。

「相変わらず人使いが荒いな、馬場は。すまない杏凛(あんり)、少しの時間俺は外に出てくる」

「え? でも私は……」

 初めてきた場所で一人きりにされても困る、インコの赤ちゃんもどうするか決めれていないし匡介さんは何を考えてるの?
 それなのに匡介さんは馬場さんに追い出されるようにドアから出て行ってしまった。

 匡介さんがビルから出て行ったのを窓から確認して、馬場さんはこちらを振り返りニッと笑ってみせる。彼の親しい人だから悪い人ではないはずなのに、彼女の微笑みに胸がバクバクと音を立てているよう。

「ごめんなさいね、私どうしても杏凛さんと二人きりで話をしたくって」

「私と馬場さんで、ですか? いったい何の話を……?」

 こういうシーン、小説やよくあるドラマで見たことがある。まさか匡介さんに限ってそんな事あるわけないと思っても、馬場さんの含みのある言い方に不安は一気に大きくなる。
 このままこの場所から逃げ出してしまおうか、そう思った時に馬場さんがスッと手を差し出してきて————


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