桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「なんだ?」
そう言った匡介さんはいつも通りで、私が馬場さんから彼の秘密を見せてもらっているなんて思いもしないのでしょう。
いざ聞こうとすると、何と言って切り出せばいいのか分からない。せっかく馬場さんが二人で話す時間を作ってくれたというのに。
「その……ずっと疑問だったのですが、どうして匡介さんは私と結婚しようと思ったんですか? きっと貴方なら私よりももっと魅力的な女性が紹介されていたはずなのに」
鏡谷コーポレーションの御曹司で、強面ではあるが決して容姿は悪くない。それに真面目で仕事熱心な彼なら、引く手数多に違いないのだから。
それなのに決して仲の良いとは言えない幼馴染、そんな私を匡介さんはどうして……?
「あの時、君が義祖父の会社の事で悩んでいたのを知ったから」
「そんな理由で、私と結婚を……?」
確かに彼は幼馴染として出来る事と、妻に対して出来る事は違うと言った。それでもあの時はまだ、匡介さんが私と結婚するほかのメリットがあるのだとばかり思っていたのに。
私の祖父の会社の立て直しなど、彼にとってメリットなど有りそうにない。それでも私を助けるためだけに、彼は結婚という形を選んでくれたのだろうか?
「そんな理由なんて事は無い。少なくともそれがきっかけで、俺はこうして杏凛の傍にいることが出来ている」
どこまでも真っ直ぐに見つめてくるこの人の言葉に嘘は無いのだと思う。言葉少ない彼がこうして語ってくれる本音はいつも私の胸を温かくさせるものばかりなの。
匡介さんの心の内を聞くたびに、二人の関係に少しずつ希望が見つかっていくような気がしていた。