桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
その後、お茶の乗ったトレイを運んできた馬場さんと三人でインコの飼育の仕方について話をしたりして、彼女が用意してくれていた小鳥用の鳥籠などを受け取った。
私も持ちますと言ったのに、匡介さんは全て一人で持って歩きだす。少しくらいは自分にも何かさせてくれてもいいのに、どうすれば彼の過保護を抑えられるのかしら。
「名前……」
「はい? 名前がどうしたんですか」
隣を歩く匡介さんがポツリと聞いてくる。一瞬何のことか分からずに聞き返すと、今度は彼がゆっくりと私の顔を見て答えてくれた。
「インコの名前、もう決まったのか? 名前が無いとこの子たちを呼ぶときに困る」
小動物に興味なんてなさそうな人なのに、彼はすでに小鳥たちの名前を呼ぶことの心配までしているようで。いつもの無表情で小鳥に話しかける匡介さんを想像すると、勝手に口元がにやけてきてしまって……
「ふ……ふふっ、ふふふふっ!」
いけない、笑っては匡介さんに失礼だと思ってもどうしても笑い声が止まってくれない。だって、だって……匡介さんのそんな姿を思い浮かべたりするのはきっと私だけ。
「杏凛? 俺は何かおかしなことを言ったのか?」
「いいえ、でも……ふふっ、当然のようにそんな事を言う匡介さんが可愛くて」
さすがに小鳥に話しかけた貴方を想像しました、とは言えずちょっとだけ嘘をついてしまった。でも、この人の事を可愛いと思ったのは本当のことで……