桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「それで……杏凛さんはどうして匡介さんに甘えることが出来ないでいるの?」
料理教室のビルの傍にあるお洒落な喫茶店。それぞれの飲み物をオーダーすると、すぐに香津美さんがそう問いかけきて。
私が普段自分の事を話さないせいか、二人は興味津々と言うようにテーブルに身を乗り出しかけている。
それでも彼女たちなら親身に話を聞いてアドバイスをくれるような気がしたから、少しずつ匡介さんとの結婚について話し始めた。
「私と匡介さんは、契約で結ばれた夫婦なんです。追い詰められた私にそう提案してきたのも彼だったのですが……」
「契約結婚ですって!?」
やはり契約結婚なんてありえないような話なのか、私の話を聞いて香津美さんはとても驚いた顔をする。隣で話を聞いている月菜さんはそうではなかったけれど。
それでもきちんと話をするべきだと思い、今の私が匡介さんの行動で戸惑っている事を説明してみた。
「はい、私はきちんとそう割り切って判を押したつもりだったんです。ですが結婚後、匡介さんはそんな私を異常なほど過保護に甘やかすようになってしまって」
結婚当初だけかと思っていた過保護は数か月過ぎた今でも変わらず、これから私はどうすればいいのか。
契約結婚のはずなのに必要以上に優しくされて、そんな彼に私は素直に甘えてしまいそうになる事も……
口下手な私の説明を香津美さんと月菜さんは黙って聞いていてくれた。
「それじゃあ、杏凛さんはそんな匡介さんのとる行動を迷惑だと感じているの?」
私が迷惑? そんなこと考えたことなかった。むしろ私のことで匡介さんに迷惑をかけてないか、そんな事ばかりが気になって……