桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「迷惑……とは思っていません。ただ、彼が契約妻の私にそんなに構う理由がどうしても分からなくて」
わざわざ契約結婚という形で私と夫婦になったという事は、匡介さんは当たり前の夫婦関係など望んでないはず。
私はそう思って彼と暮らし始めたのに、想像していたのとは何もかも違っていて……
だけど匡介さんが私のことをただの契約妻だとは思っていないのかもしれないと、期待してしまうのが怖い。素直にあの人の優しさに応える勇気が出ないの。
そんな私の言葉に香津美さんと月菜さんは顔を合わせて小さく頷きあっていた。それが何を意味するのか知りたいけれど、知って後悔しないかとばかり考える。
本当は匡介さんに直接聞くべきこと、それが出来ずにこうやって香津美さんと月菜さんからヒントを得ようとしてる。いつも自分の意気地の無さに呆れてしまいそうだけど……
「それなのに、匡介さんはもっと自分に甘えろと言うばかりなんです。今更そんな事言われても、私……そんな時に月菜さんの会話を聞いて、詳しく教えてもらえたらと思ったんです」
この歳まで家族以外の誰かに甘えるなんてしてきたことなかったの。それなのに幼馴染とはいえ、いきなり夫になった彼に甘えるなんてとても出来そうにない。
そういう自分の気持ちを一生懸命に二人に伝えると、彼女たちは私たち夫婦のためにいろいろな方法を考えアドバイスしてくれた。
そうやって三人で悩んだり笑ったりしている間にすっかり打ち解けて始めていた、その時……
「……杏凛、約束の時間になったので君を迎えに来た。もう家に帰るんだ」
慌てて時計を確認すると約束の時間ピッタリで、いつの間にテーブルの傍に来ていたのか匡介さんが私に手を差し出してくる。
そんな様子を香津美さんと月菜さんが興味津々と言う顔で見ていると匡介さんの後ろから別の男性が現れる。
「時間ですよ、月菜さん。僕と一緒に帰りましょう」
月菜さんの夫である二階堂 柚瑠木さんも、同じように驚いた彼女に手を差し伸べる。二人の様子をもっと見ていたかったが、私はそのまま匡介さんに手を引かれ店を出た。