桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
寧々が仕事を終えて帰り、匡介さんが帰宅するまでの数時間。いつもは読書や音楽を聞いたりして過ごしているのだけど、今日は何となく散歩に出かけた。
日が落ちるのが遅い季節だから少しくらい大丈夫だろうと、近くのコンビニに寄り家に帰った。
「これ、誰からかしら……」
ポストの中を覗くと真っ白な封筒が一通届けられていて、手を入れて取り出し差出人を確認する。しかし……
「宛先も差出人も書いてない、ここに直接持ってきたってこと?」
書いてあるのは私の名前だけ、それも旧姓で。私がここに住んでいるのを知っているのならば、今の私は鏡谷 杏凛だとわかるはず。それなのに、いったいなぜ?
手紙が気になりながらも一度落ち着こうと思い、部屋に入ってグラスに水を注いで飲む。大きく息を吐いてから、手に持っていた封筒を開ける。
封筒を逆さにすると落ちてきた小さな丸い石、それもたった一粒だけ。
「これって、アクセサリーに使ったりする天然石? どうしてこんなものが……」
もう一度封筒の中をのぞくが、便箋など他の物は入っていなかった。意味が分からず、このままにしておくのも良くないと今夜匡介さんに話をしようと思った。
まさか匡介さんが、こんな小さな石一つであんな風に取り乱すなんて思いもせずに……