桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
私は匡介さんの妻であって、彼の子供なわけじゃない。自分の考えはしっかり持っているし、意見だってハッキリと言える。
この時の私は匡介さんにどんな事情があるかも考えず、ただ理不尽さを感じて彼の言葉に反抗してしまった。
「今の状態で君に話せることは無いんだ、少しの間でいいから大人しく俺の言う事を聞いてほしい」
「嫌って言ったら嫌なんです、自分の事なのにそれを知る事も出来ない。そんなのおかしいと思いませんか!?」
この日に限って私は彼に対して妙に意固地になってしまっていた。
最近は匡介さんとの距離が少しだけ近づいていた気がしたのに、こうやって壁を作られたことに大きな不満を感じたのかもしれない。
「いいか杏凛、君の気持ちは分かるがそう感情的にならずに、これからの事を……」
私の感情の昂りに気付いても冷静なまま話をつづける匡介さんに、我慢しきれなくなった苛立ちをぶつけてしまう。
「そうね、どうせ私なんて黙っていう事を聞いていればいいだけの契約妻ですから! もう、放っておいて!」
「杏凛!!」
これ以上とんでもないことを彼に言ってしまわない様に、慌てて自分の部屋に戻り鍵をかける。匡介さんが私を呼び止める声に気付いていたが、今はもう顔を見る事も出来そうになかった。