桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
次の朝、匡介さんはいつもと変わらず早くに家を出て仕事場へと向かう。私はそんな彼の様子を部屋の壁を一枚隔てて窺っていた。
昨日の今日だから、匡介さんから何か言ってくるかもしれない。そしたら私もちゃんと謝って……なんて、そんな私の考えは甘え過ぎだと反省するしかなかった。
「喧嘩ですか? いったい、またどうして」
結局自分一人で解決できず、こうして相談に乗ってくる寧々に頼ってしまう。私は昨日会った出来事を、丁寧に寧々に説明してみせた。
しかし寧々は送り主の分らない手紙と天然石の話になると、普段見せないような険しい表情になって……
「私は旦那様の言うことに賛成ですね。この事は彼に任せて、杏凛様はなるべく私や旦那様の傍にいるべきです」
「寧々まで、どうして……」
匡介さんも寧々も私の知らない何かに気付いていて、そうして私にだけそれを隠そうとしているみたい。
何も話せないという姿勢はどちらも同じで、それ以上はいくら頼んでも寧々は私の質問には答えなかった。
匡介さんと結婚するまでも、私は実家でかなり過保護にされてきた。でもそれはずっと私が病気だからだとばかり思っていた。
でも、もし何か違う理由があるのだとしたら、それはいったい何なのだろうか? この日も不安な気持ちを抱えつつ、ただじっと匡介さんの帰りを待った。