桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
次第に激しくなる雨音を聞きながら、気を紛らわせようと読み途中だった小説本を取ろうと立ち上がる。タブレットを操作していた匡介さんが、こちらをチラリとみたが特に何も言わなかった。
リビングの奥にある本棚から目当ての物を取り出しソファーに戻ろうとした。しかしその時、窓の外が眩しく光ってしまう。
「あ……ああ……」
空が光れば次に起こる事は分かっている、雷鳴が聞こえる前に急いでソファーに戻らなければ! そう思うのに、先ほどの光だけで足が動かない。
大きな不安と恐怖で泣いてしまいそうになった、その瞬間————
「杏凛! そこで待っていろ」
ソファーに座っていたはずの匡介さんがこちらに向かって来ていた。そんな彼を見て動けなかったはずなのに、私はすぐそばまで来た彼に思いきり抱き着いてしまっていた。
「あ、杏凛!?」
とても驚いた匡介さんの声が頭上から聞こえるけれど、今はそんなこと考える余裕なんてない。
すぐに聞こえてきた大きな雷鳴の音に私は必死で匡介さんの胸にしがみついていることしか出来なかったから。
「いや……こわい、の……」
「杏凛……大丈夫だ」
匡介さんは怯える私を突き放したりする事はなく、そっと背中に腕を回して少しでも私の不安を軽くするように優しく撫でていた。
「だめ、ひとりは……こわいの……」
「杏凛、大丈夫だ。俺が君の傍にいる」