桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜

「匡介(きょうすけ)さん……私だって本当は怖いんです。この結婚が、今の私達の関係がずっと怖かったんです」

　この気持ちを匡介さんに伝えていいのかほんの少し迷いはあった。こんな事を言えば彼はすぐに自分を責めてしまいそうだから。
　けれど、これもお互いが相手を知るためには必要な気がしたから。

「怖い……それは俺のことがか？」

「違います、匡介さんの事は怖くないんです。怖いのは、不安定なこの夫婦関係と今の気持ちで……」

　匡介さんの事を苦手だと思ってた、でもそれはずっと前から心のどこかで彼の事を意識していたから。
　彼に近づけば近づくほど苦手だと思っていたはずの気持ちが、胸の中で変化している事に気付いて。
　……だけど、私はこの人と契約を結んだだけの期間限定の妻でしかない。

　その事がどうしようもなく、臆病な私を不安な気持ちにさせていた。

「つまり杏凛(あんり)は今の夫婦関係に不満があると？　もしそうなら俺に出来る事があれば、何でも言ってくれれば……」

「はい、だから言いました。匡介さんの我儘を私にも聞かせて欲しい、これからは貴方と対等な関係になりたい、と」

　結婚してこんなにハッキリ自分の気持ちを伝えられたのは初めて。もしこの気持ちを拒絶されたらと不安はあったけれど、同じくらい苦しかった胸の中もスッキリとしていた。