桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「じゃあ早速で悪いが、俺の我儘を一つ言わせてもらってもいいだろうか?」
意外だわ、匡介さんは何だかんだと理由をつけてそれを後回しにすると思ったのに。もしかしたら口に出さないだけで、本当は私に不満だらけだったとか?
そんな事を考えて少し不安になるが、いまさら自分で言った言葉を取り消すつもりはない。
「もちろんです、匡介さんの我儘を私に聞かせてください」
匡介さんはいつも通りの仏頂面、だけど私と同じようにその胸がドキドキしているはず。でもそのドキドキも、今までで一番嬉しいと感じるの。
これで少しくらい匡介さんの本音を知ることが出来るはず……だった。
「では、もう一度だけ抱きしめさせて欲しいんだ。杏凛、君の事を」
「……はい?」
もしかして私の聞き間違いだったりするのだろうか? 匡介さんが私のことを抱きしめたいと言ったような気がするのは。
……まさか、いったい何のために?
「もう一度君を抱きしめさせてくれと言っている。今だけでもいい、君の夫として杏凛の事を抱きしめさせて欲しいんだ」
「どうして、そんな事を……」
もっと他に言いたい我儘は無かったの? 私を抱きしめたいなんて、そんな事を言われるなんて思ってもみなかった。
嫌なわけじゃない、でもそんな急に言われても……
「そ、それは我儘じゃないわ。そういうのはお願いって言うのよ」