桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
契約結婚が大きく変わる時


 昨日の事があり私たちの関係も大きく変化したのではないか?
 そう期待に胸を膨らせていたが、匡介(きょうすけ)さんの私に対する態度は以前と何の変化もないままで。簡単に夫婦の在り方を変えるのは難しいのだと実感した。
 
 匡介さんが出社し、いつものように家事を進めていく寧々(ねね)にちょっと不満を漏らしてみたりして。

「奥様って意外と欲張りなんですね、まあ箱入りで大事にされてきたので分からないではないですけど」

「欲張り? 本当に欲張りなの、私は? 昨日、匡介さんにも同じことを言われたの」

 呆れたような顔をしている寧々を問い詰めると、あっさり「そうですね」と言われてしまった。まさか、そんな自分が欲深い妻だったなんて……

「だってよく考えてみてください。旦那様が一生懸命に杏凛(あんり)様の望みを叶えようと努力してるのに、そうやっていつもと変化がないと文句を言って」

「ええ? でも私だってもっと夫婦らしい毎日を……」

 ベタベタしたいとまでは言わないが、少しくらいは優しく微笑んでくれたり私も微笑み返したり。そんな事を考えていた。

「想像してください、杏凛様。目の前には朝から意味もなく満面の笑顔の旦那様がいる、本当にそれで貴女は心が落ち着きますか?」

 言われて想像すると、自分が思っていたのよりだいぶ違和感のある光景だった。自分が思い描いていたものとは違うが、寧々の言う通り落ち着けるかと言われるとNOだ。

「ちょっと、これじゃない気がしてきたわ。寧々の言う通りかも」

「そうでしょう? そんな事旦那さんにも出来るわけないんです、無理な事を望みすぎなんですよ杏凛様は」

 ……本当にそうなのかしら? いいえ、寧々が言うのならやはりそうなんでしょうね。


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