桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜


「気が付いたか、杏凛(あんり)

「ここ……は?」

 料理教室で倒れ、鵜方(うがた)先生の病院に連れて行かれた事だけは何となく覚えてる。でも今いる場所は慣れた鵜方先生の病院のベッドでもなく、いつも眠っている私の部屋でもない。
 起き上がらずに首だけを動かして周りを見ると、どうやらここはホテルの一室らしい。

鏡谷(かがみや)コンツェルンが経営しているホテルの一つだ、今夜はこの部屋に泊まるから無理をしないで眠っていると良い」

 どうやら鵜方先生の医院に近いホテルへと私を運んできたらしい。いつでも先生と連絡が取れるように、と言ってたけど相変わらず匡介(きょうすけ)さんは過保護だ。

 それにしても、今日の発作はいつもよりとても苦しかった。頭がガンガンと痛み、怖くて呼吸もままならなくて……
 何かを訴えてくるかのように警報音のような何かが鳴り響いているようだった。

「匡介さん、今日の私は……いつもと違っていましたか?」

 自分ではいつもと違うと感じたが、匡介さんから見た私はどうだったのか。今はそれを知りたいと思って聞いてみた。

「……発作が起こる前、君に何があったのかを詳しく聞きたい。鵜方先生はそう言っていた」

「発作が起こる前、ですか……」

 いつもと大きく違う事はしていない。普段と変わらず月菜(つきな)さんと話をして調理をし、片付けを終えて調理室を出た。
 その時に近くにいた女性のブレスレットから落ちた天然石を拾って、それで……


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