桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「杏凛様! ほら、ボーっとしてないで家に入ってください。昨日倒れたっていうのにそんな所に立っていられたら困ります!」
いつの間にか私の傍に来ていた寧々が、少し怒った様子で私を引っ張って家の中へと連れて行く。いつもならまだ出勤時間ではないはずなのに、わざわざ早く来てくれたのだろうか?
「寧々、貴女どうして?」
「旦那様から杏凛様が倒れたと聞きましたんで、少し心配になっただけです。これでも貴女の専属になってそれなりに長いんで……」
寧々は私が実家で暮らしていたころから面倒を見てくれている、そんな彼女だからこんな時は本気で心配して傍に居ようとしてくれるんだわ。
「匡介さんの代わりに寧々が傍にいてくれるのね、心強いわ」
「そ、そんなの旦那様に頼まれなくても当たり前です! 杏凛様は私にとって可愛い妹のようなものなんですから」
普段余裕そうな寧々がテレているのか顔を赤くして話す。そんな様子がちょっとおかしくて「ふふふ」と笑ってしまった。
それに妹だなんて、ちょっと特別な存在になれたみたいで嬉しいもの。
「妹みたい、ね。寧々みたいなしっかりしたお姉さんが居てくれれば安心だわ」
「そうですよ、お姉ちゃんだと思って少しは私にも甘えて良いんです」
小さな声で「旦那様ばかりじゃなくて」と聞こえたのは内緒にしておきましょう。今日の寧々は何だか可愛くて、ギスギスしていた気持ちが少し楽になっていった。