桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「私、実家に帰ろうと思うんです」
仕事から帰ってきた匡介さんに「おかえりなさい」と言うのも忘れてそう言った。寧々とも話してみて、やはり両親に話を聞いてみない事には何も始まらない。そう思ったから。
けれど私がそう言った瞬間に匡介さんから表情が消えてしまった。というか、彼の目がどこを見ているのかも分からない。
「あの、匡介さん……?」
「……限界ということか?」
低い声で言われた言葉の意味が分からない、限界とはいったい何のこと? けれど私を見つめる匡介さんの瞳は真っ直ぐで、どこか切なさを感じさせてくる。
「あのですね、私は実家に帰らせてもらえないかと思って話をしようと……」
「やはり君は俺と暮らすことに限界を感じてるんだな? すまなかった、今すぐ杏凛の両親に連絡をして迎えに来てもらおう」
私に最後まで言わせず、匡介さんは言葉を被せるように早口でそう言いきった。
だけどその内容は私の考えていることとは全くズレていて、彼が何か誤解をしているということだけは理解出来た。
「違います! どうしてそんな話になるの? 限界なんて一言も言ってませんし、早とちりは止めてください」
私は両親に話を聞きに帰りたいだけなのに、匡介さんの言い方ではまるでこの家を出ていきたいみたいに聞こえるじゃない。