桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「じゃあどうして実家に帰りたいなんて言うんだ? 俺は最初から覚悟は出来ているのだから、本音をぶつけてくれて構わない」
匡介さんは誤解をしたまま私の言うことなど聞こえていないみたいに話す。何の覚悟ができているのかは知らないけれど、さすがに腹が立ってきたわ。
「最初から本音で話しています! 私は昨日の天然石の話を両親に聞きに行こうと思ってるだけですから!」
そういった瞬間、匡介さんの顔色が変わった。さっきまでとはまた違う、彼は戸惑うように目を泳がせている。
「それは……駄目だ。そんな理由なら実家に帰ることは許さない」
「何故ですか? これは私にとって何か大事な気がするんです。だから……!」
唸るように言われた言葉に私も戸惑ったが、それだけで「はい、そうですか」と納得出来ることじゃない。それなりに考えて寧々にも相談して出した答えなのに……
「一人が駄目ならば、寧々も一緒に行ってくれることになっています。それでも駄目ならば、きちんと理由を教えてください!」
「誰が一緒でも駄目なものは駄目だ、悪いがこの話はこれ以上する気はない」
そう言って私の隣をすり抜けて、匡介さんは自分の部屋へと入ってしまう。
その日の彼は夕飯だと呼んでも、お風呂だと声をかけても私が眠るために自室に入るまで決して出てくることはなかった。
眠れないままベッドの上で瞼を閉じたり開けたりを繰り返していると、匡介さんが静かに自室から出てバスルームへと向かう足音が聞こえ悲しくなる。
やっと近付いてきたと思ったのに、また元に戻ってしまったようで少しだけ涙が滲んでしまった。