桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
契約結婚で隠した過去には


「いいんですか、杏凛(あんり)様? 今日はどこにも出ないようにと旦那様が……」

 匡介(きょうすけ)さんの言いつけを守らず、外に出る準備をする私を寧々(ねね)が焦ったように引き止めようとしてくる。それもそのはず、今朝匡介さんは私と寧々に絶対に外出しないようにと言い残して出て行ったのだから。
 昨日の事で匡介さんがピリピリしていたのは分かる、だからと言って外出するななんてあまりに横暴ではないだろうか?
 普段は我慢出来ていた反抗心がムクムクと湧いて、何としてでも実家の両親に話を聞いてやるという気持ちにさせられてしまった。

「いいのよ、寧々は無理について来なくても。元々これは私の問題だし、自分で解決しなきゃならない事だから」

「そんなこと言わないでください、私は杏凛様を心配してるんです! お嬢様に何かあったら私は……!」

 珍しく寧々が声を荒げた。普段見られないような余裕のない表情をしている彼女を見て、本当に心配してくれているのだと分かる。
 だけど、今やらなければずっとこのままのような気がして、覚悟を決めた気持ちは変わらなかった。

「寧々、お願い。私はずっと気にしないようにして生活してきたけど、やっぱりこのままは嫌なの。きちんと話を聞いて、過去と未来に向き合いたいの」

 匡介さんは私の過去を隠そうとしている、それだけは間違いない。その理由がどんなものかは分からないが、それを知らないうちは私たちの関係はこれ以上前に進まない気がしてる。
 だから私は過去をきちんと受け止めて、そして匡介さんとのこれからの未来を見つめたいの。

 そのためだから、言うことを聞かなくてごめんなさい。そう心の中で何度も謝って、私は玄関を出た。


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