桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「何を言ってるのよ、そんな事出来るわけないじゃない!」
実家に帰るといっているのは私の方なのに、それを寧々のせいになんて出来っこない。彼女はそうすることで匡介さんから私が叱られないようにしてくれてるんだろうけれど、とんでもないわ!
そう思った私が寧々に向かってそう言うと、普段の寧々からは想像も出来ない迫力で睨まれた。
「出来なくてもそうなんです。運転手さんも、いいですね?」
私だけでなくタクシーの運転手まで脅して口裏を合わせるようにしようとする寧々。彼女の本気がここまで怖いとは、長い付き合いなのに全く知らなかった。
「は、はい! この住所までお姉さんに頼まれた、それでいいんですよね?」
怯えたようにそう話すタクシーのドライバーが気の毒になり、私もこれ以上は寧々に反抗するのは止める事にした。匡介さんには私が直接、本当の事を話せばいいと思って。
実家までの道のり、私と寧々はほとんど会話をしなかった。こんな妙な緊張感に包まれながら帰ることになるなんて、思いもしなかったがこれからの事を考えれば仕方ないのかもしれない。
「ねえ、寧々はどうしてそこまでしてくれるの? 私なんて面倒な人間でしょう、それなのに……」
「細かい理由なんて考えてません、きっと旦那様と同じです。ただ、杏凛様を守りたいだけ」