桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
長い付き合いの寧々が私に嘘をつかないことくらい分かってる。彼女が私を守りたいと言ってくれるのは本当の事だと思うが、匡介さんもそうだと言い切れる理由は何だろう?
幾つかの隠し事をしている匡介さん、そんな彼に怒っていたはずの寧々がどうして……?
「でも守られてばかりは嫌なの、私だって自分の出来ることはやりたい。それもダメなの?」
「いいえ、杏凛様がそうしたいならいいんです。ですが私も一緒について行く、それはダメなんですか?」
寧々に上手く返されてしまって、私だけダメとは言えなくなった。私の好きにさせる代わりに自分も連れて行けなんて、寧々も意外と強引で匡介さんに似ている所があるのかもしれない。
「私の周りの人はみんな強引だわ、とても勝てそうにないのよ」
「そうですか、残念ですが諦めてくださいね?」
にっこりと微笑む寧々につられて苦笑いすると、タクシーが左折しある細道に入る。この道を真っ直ぐに進めば、私の育った家がある。
「ここでよかったですか? ずいぶん大きなお屋敷ですね~」
タクシーのドライバーは驚いたようにそういうが、鏡谷の本家の屋敷に比べればそれほどでもない。鏡谷コンツェルンはここ数十年で急成長し、私の実家とは比べ物にならなくなった。
そうして今は祖父の会社の立て直しまで頼んでいる状態、とても私と彼は釣り合っているとは言えない。
「支払いはこれでお願い。さあ杏凛様、行きましょう」
寧々は財布からお札を取り出しさっさと支払いを済ませると、私をタクシーから降ろした。
久しぶりにこの屋敷に帰ってきたような気がする、数カ月の匡介さんとの結婚生活に意外と慣れてしまっていたのだろうか?
玄関の呼び鈴を鳴らすとすぐに使用人の女性が出てきて玄関を開ける。「おかえりなさいませ」と頭を下げた女性に、すぐに両親のところへ案内してくれるように頼んだ。