桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「まあ杏凛、急に帰ってくるなんて一体どうしたの? 匡介さんは一緒にいらしてないんでしょう、一人でここまで来るなんて……」
私がリビングに入るなり母は驚いた様子でソファーから立ち上がる。どちらかと言えばのんびりとした性格の母だが、今日は少し焦ったような顔をしていた。
娘が実家に顔を出したというのに、喜ぶというよりは困っているように見えてちょっとムッとしてしまう。
「ご心配なく、寧々も一緒に来てくれましたから。それに私はもういい歳の大人です、実家に帰るくらい匡介さんがいなくても問題はないでしょう?」
強気な態度で返すと母は少し困ったような表情で父の陰に隠れる等に立つ。そんな姿は何度も見てきて慣れているので今さら驚きはしないけれど……
「母さんを困らせるな、杏凛。彼女はお前の事を心配しているだけだ、それは杏凛もわかっているはずだろう?」
「分かってるわ、でも私だって一人でも大丈夫な事を理解して欲しいの。いつかは匡介さんのいない生活に戻る、それは二人も知っているはずよ?」
私と匡介さんの結婚が期間限定のものだということは、両親も承知の上だった。今は私に過保護なくらいの彼が、いずれは私から離れていくことも。
「そうだな、私たちもそれは分かっているつもりだ。だが……いや、何でもない。ところで今日は何の用だったんだ、こんな急に会いに来るなんて」
何かを言いかけて止めた父は、本題に入れとばかりに私に用件を聞いてくる。話を逸らせれるよりはいいと思って、私もすぐに両親に質問をすることにした。