桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「今日こそ教えて欲しいんです、私の記憶のない間に本当は何があったのかを」
意を決して私がそう聞いた途端、両親の表情が固いものへと変わる。今まで何度かこの話を両親にしたことはあるが、いつも決まって何もなかったと誤魔化されて話を終わりにさせられてきた。
だけど、今度こそきちんと話してもらう。そのために準備してきたものも、手の中に握りしめていた。
「何度言ったらわかるんだ? お前に記憶がないのは可哀想だと思うが、それは勉強や人間関係によるストレスだった。杏凛の疑うような何かなど有りはしない、と」
「そうよ、杏凛。いつまでもそんなことを気にしてないで、貴女は匡介さんと仲良くする努力を……」
両親が仲が良い事は娘に私にとっても嬉しい事だが、こんな時も互いに協力的で厄介だったりもする。このことに関しては、どちらも固く口を閉ざし何も教えてくれないのだから。
「これが……誰かから私に送られてきました。この天然石にいったい何の意味があるのか、教えてくれませんか?」
そっと差し出した手のひらには、あの日封筒に入っていたのと同じような天然石。あの時の石は匡介さんにすぐに取り上げられてしまったので、似たようなものを手芸用品店で購入してきたのだ。
私の手のひらの天然石を見て真っ青になる両親、やはりこの天然石に私の記憶の秘密が隠されているのだと確信した。
そして、きっと匡介さんもこの事を知っている筈だと……