桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「どうしてそうまでして私を助けてくれたの? 今日も、あの時も……」
その理由を期待してないと言えば嘘になる、匡介さんの中に少しでも私に対する特別な想いがあってくれればいいのになって思っていた。
少なくとも私の胸の中で匡介さんは他の人とは違う存在になっていたから。
「今言っても君を混乱させるだけだ。俺は杏凛の負担になるような言葉を言うつもりはない」
私にとって負担になる? それはいったいどういう事なのか、いい方にも悪い意味にも取れる言い方が私を戸惑わせる。匡介さんはいつもそう、私の為と言って自分の本音や気持ちは何一つ教えてくれない。ずっと彼の心の中に仕舞ったままで……
「それでも私が知りたいといったら? それとも私の都合のいいように考えても構わないとでも言うの?」
「杏凛がそうしたいのなら、俺はそれでも構わない」
そうじゃない、私が匡介さんと話したい理由はそんなんじゃない。もっと匡介さんと分かり合いたいの、貴方の事をちゃんと理解したいのよ。
そして同じように、匡介さんに私の事を……全部知って欲しい。
こんな時だからこそ通じ合いたいのに、私の気持ちは少しも彼には伝わらない。それがどうしようもなく悲しい。やっと自覚した想いをただ口にすることも叶わない……
どうして 匡介さんはこんなに自分の本音を私には話してくれないのだろう? そう考えた時、ふと思い出してしまった……あの時の、郁人君の言葉を。