桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
『杏凛ちゃんは本当にあの男を信頼しちゃってるのかな。アイツは新婚初日に妻を置いて外泊するような男なのに?』
郁人君は知っていた、あの日の夜に匡介さんが私を残して一人で出掛けていたのを。そして次の朝まで彼が家には帰ってこなかったことまで。
もしかしたら盗聴器でも仕込まれているのかと考えた、でも郁人君の事に気付いていた匡介さんがそのままにしておくとは思えない。それじゃあ、何故……?
『二人の特別な夜を他の女と一緒に居たのかもしれない、そんな鏡谷 匡介を君は本当に信じてもいいの?』
そんな訳ないって、匡介さんを信じるべきだと思ってる。それなのに匡介さんは私をどんどん不安にさせる、郁人君の言った言葉に心を揺さぶられてしまう。
匡介さんに手を伸ばしたいのに、私には彼の手がどこにあるのか見えないまま。
「あの日の夜……匡介さんはどこに行ってたの? 新婚初夜に新妻である私を置いて、行かなければいけない場所ってどこなの?」
ずっと聞けなかった、聞く勇気も無かった。でもこのままずっとこの関係が進まないのなら、今ハッキリさせてしまいたかった。
もし聞かないまま私たちの関係が終わったら、きっと後悔するから。
「どうして、それを今……?」
「今なら覚悟が出来てるから、全部を自分の中で整理したいの」
私の言葉に匡介さんは少し悩んだ仕草を見せたけれど、真っ直ぐに彼を見つめ続ければ諦めたように小さな溜息をついた。私は何となくそうすれば匡介さんはその話をしてくれる事に気付いていたのかもしれない。
「あの日、君との結婚式のあった夜に俺は……」