桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「私は、そうは思わないわ。もしかしたら助けて欲しいとは言うかもしれないけれど、ちゃんと自分で考えてとる行動を選びたいもの」
今まで多分私は匡介さんたちが用意してくれた安全なレールの上を歩いていたに違いない。だけどそれは私の望んだ形じゃない、だから……
そう話す私に匡介さんは驚いた様子は見せない、きっとこれも予想していた場面だったに違いない。
「どうして黙って出て行ったの? 両親や祖父に会う、そう言えば私だって余計な詮索はしないのに。あの夜私がどんな気持ちでいたと……」
「正直、あの橋茂 郁人との話し合いをするのに焦っていたのもある。それに……俺がいなくても気付かれない、気付いても杏凛が俺の事で不安になる事などない。ずっとそう思っていたんだ」
その言葉にカッと頭に血が上ったのを感じた。私が匡介さんがいない事を不安に思わない? なぜそんな事を匡介さんが勝手に決めるのか、訳が分からない。
私が彼がいない事に気付いたのは確かに朝だった。でもいつから居ないのか、私の事がそんなに嫌なのかともの凄く悩んだのに!
「俺と杏凛は三年間の契約夫婦でしかない、理由だって俺が勝手に作っただけのもの。君が嫌々俺の傍にいることくらいは、充分に分かってるつもりだ」
「ふざけ……ないでよっ!」
パンッと乾いた音が室内に響く、私が思いきり匡介さんの頬を引っ叩いたからだ。