桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
そうか、夢を見てたんだ。そう理解するまでに少し時間がかかった、昨日の出来事があまりにも非現実的で、どこまでが現実でどこからが夢なのか判断がつかなかったのかもしれない。
匡介さんの大きな手が私の額に触れる、どうしたのかと思ったがそのままジッとしていると……
「悪い夢を見たんだろう、ひどく魘されていた。汗もかいてるしタオルを持ってこよう」
ああ、彼は私の額に浮かんだ汗を拭ってくれたらしい。それにしても匡介さんはいつから私の部屋にいたのか、魘されてる様子まで見られていたと思うと少し困ってしまう。
そんな私を置いてさっさと部屋から出て行った匡介さんだったが、数分もしないうちにタオルと水の入ったグラスを持って戻ってくる。
「汗を拭いて、念のために薬も飲んでおいた方が良い。そして明日一番で、鵜方先生に診てもらおう」
「そんな、ちょっと怖い夢を見たくらいで……」
過保護すぎる、そう言えなかったのは匡介さんの眼差しがあまりにも真剣だったから。昨日の事を考えれば鵜方先生にきちんと相談した方が良い、それは当たり前の事なのだけれど……
どうしてか分からないが、この時の私は何となくそんな匡介さんの態度に不安を感じていた。
「……いつまでここにいるの?」
もう一度ベッドに横になった私から少し離れた場所に立ったまま、いつまでも匡介さんは部屋から出ようとしない。
「君が眠るまでここにいる、だから俺の事は気にしなくていい」
そう言われても気になるのだけど。それでも身体は疲れていたらしく、瞼を閉じればあっという間に意識は遠くなっていった。