桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜


「でも、匡介(きょうすけ)さんだってお仕事で忙しいでしょう? そんな時間は……」

 お飾り妻の私に気を使ってくれるのは嬉しいけれど、彼の自由な時間まで私が奪ってしまうのは気が引ける。それでも心のどこかで匡介さんが本音で言ってくれてるのかもしれないと、期待している自分もいて……

「俺だって妻のために時間を作ることくらい出来るさ。杏凛(あんり)は俺に気を使いすぎている、君はもっと周りに甘えるべきだ。さあ、行こう」

 匡介さんは再び歩き出し、私を店の中へと連れて行く。彼がこんなに強引な人だなんて全然知らなかった、私が持っていた匡介さんのイメージはもっと……

「いらっしゃいませ、鏡谷(かがみや)様」

「……ああ、今日は妻に似合いそうな服を見せてもらおうと思って」

 笑顔で挨拶をする女性に匡介さんはそう言い、ごく自然に私の肩を抱き寄せてスタッフたちに紹介してみせる。
 その行動に驚いて彼を見上げるけれど、匡介さんは全く気にしていないようで……
 何故こんな見せびらかすみたいに私を抱き寄せる必要があるのか? 匡介さんが何を考えているのか分からなくて、反応に困り人形のように固まってしまう私。
 そんな私を椅子に座らせると匡介さんや店員が次々と服を選んで、こちらに運んでくる。とても素敵な服だけど、地味な私にこんなに持って来られてもどれが自分に似合うのか分からない。


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