桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「……こんな時間にすまない。君と交わしたあの時の交換条件で話したことを、今から頼みたい」
交換条件……なにそれ? いったい匡介さんは誰と何を話しているの? 今から頼みたいっていったいどういう事なのか、私は訳も分からず電話で話す匡介さんを見ていた。
「ああ、そうだ。今から彼女を君たちの家に連れて行く。そう時間はかからないだろうからよろしく頼む」
匡介さんの話す内容に私は嫌な予感がした、彼は私をどこかに連れて行く気なのだと。もしかしたら鵜方先生の病院? でもそれなら交換条件だなんて言うはずがない。
「匡介さん……?」
さっさと通話を終えた匡介さんが私をじっと見つめる、その瞳の奥の彼の考えは読めない。彼はゆっくりと私に近づくと、ベッドに手を置き静かに口を開いた。
「君は実家に帰りたいと思うか? もしこの家が辛く杏凛が望むなら……そうしても構わない」
実家に帰る? そんなこと考えた事も無かった、今実家に帰れば家族は私をこの家には戻してくれないかもしれない。そんなのは嫌……!
「実家には帰らないわ、匡介さんが帰って欲しいって思ってても今は帰らない」
「そうか、じょあ鵜方先生に紹介してもらって入院と言う手もある。それならどうだ?」
なぜそんなことを急に出だしたのか、もし私の存在が重荷ならハッキリそう言ってくれてもいいのに。そんなマイナス感情が心の中で渦巻いている。