桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「奥様は試着されますよね、こちらで……」
スタッフの女性がそう声をかけてくれたけれど、戸惑う私の代わりに匡介さんが首を振る。
「いや、試着は必要ない。妻に服のサイズを確かめてもらうだけにしておいてくれ」
……どうして? 彼は私が言おうとしていたことを全て分かっているように、スタッフにそれを伝えることが出来るのか。匡介さんはどこまで私の事を知っている?
不思議に思って彼を見上げれば、いつも通りの不愛想な顔のまま服を私に渡してくる。
「服の大きさに問題ないか見てくれ、流石に俺も君のサイズまでは詳しくは知らない」
私の疑問を躱すかのように、また服を探しに行こうとする匡介さんの上着の裾を思わず掴んでしまう。そんな私の行動に、少し驚いた顔で振り向いた彼に私は……
「あの……ありがとうございます、さっきは私の代わりにスタッフの方に伝えてくださったんですよね? でもこんなにたくさんの服を買っていただいても、私は……」
本当は試着室に入る事の出来ない私、それを言葉にすることも無く匡介さんはあの場を済ませてくれた。それが当然の事だというように、彼は私を守ってくれているようにも感じた。
それは嬉しいけれど、こんなに色々な服を私はどうすれば……
「……杏凛、君は見たい映画はあるか?」