桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
分かってる、鵜方先生は私の事を真剣に考えてそう言ってくれてるんだって。今までは医師としての意見しか言わなかった、そんな彼の初めての本音を私はどう受け止めればいいのか。
確かに匡介さんとの結婚生活は、私が子供の頃から望んだようなものとはかけ離れていたと思う。でもそれは契約という形で結ばれたから仕方ないものだと諦めていた。
でも、鵜方先生の言うように苦しいばかりだったかと言えばそうでもない。私は確かにあの結婚生活の中にも楽しさや驚き、そして小さな幸せを見つけられていた気がする。
「もし、私が離婚なんてしたくないと言ったら……夫を苦しめることになるんですよね?」
「それはどうだろう? 杏凛がそう匡介君に言われたのかい?」
そう言われて静かに首を振る、もし聞いたとしても優しい匡介さんがそんな事を言うはずがない。言えない人だからこそ、きっと一人で抱えて苦しんでるんだと思う。
「はあ、君たちはいつも相手がどう思っているのかばかりだ。自分の気持ちは全部犠牲にして、相手の幸せだけを考え空回りしてる」
「……空回り、ですか?」
鵜方先生は困ったように笑う。彼だけ何かに気付いていて、それを私に話そうか迷っているようにも見えた。だけど顎に手をあてた仕草の後、鵜方先生は……
「杏凛も匡介君ももう少し素直になれればいいのにね、そうすればあっという間に全部解決しちゃうのにな」
なんておどけてみせる。きっとそれが鵜方先生の出せる精一杯のヒントなんだって私にも伝わった。私が素直になれば何かが変わる?
「さて、次の患者さんの時間だ。杏凛はもう出て行っていいよ、一番大きな答えは自分で出すしかないのだから」
「はい」