桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「はあ、はっ……はあ……」
普段外に出ることも少なく運動もしない私は、同年代の女性より体力がない。足も遅いしすぐに息切れして上手く走る事も出来ない、それがこんなに悔しいなんて……
こんな時に限って焦って履いたため靴のヒールが高い、いっそ脱いでしまいたいほどだった。だけど……
「きゃあっ!」
足がもつれてそのまま転んでしまい痛みで蹲ってしまう、こんなことしている場合じゃないのに。捻ったのかズキズキと痛む足首、それを引きずるようにして私は匡介さんの会社へと向かっていく。
ただ会いたい、今すぐに。あのムスッとした顔を見て自分ばかり無理するなと怒ってやりたい、少しくらいは弱みを見せてと言って。そして……
「私だって、匡介さんに頼られたいんだから!」
与えられるだけなんてもう嫌なの、我儘も全部聞いて欲しい訳じゃない。時にはあなたを試すための我儘もあるんだって気付いてよ。
一度掴んだ手を簡単に離さないで、ちゃんとその腕に捕まえててほしい。だって、私もこれからはそうさせてもらうから。
「……は、つい……た」
目の前の巨大なビル、こうしてくるのは初めてだけどやはり緊張する。もう靴が脱げかけてるしストッキングは破れて血が滲み、白いスカートも汚れてる。
それでも、ここで引き返す気にはならなかった。