桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「あの、鏡谷 匡介に会いたいのですが……」
「どちら様ですか? すみませんが、アポをお取りでない方は……」
私の格好を見た瞬間、受付嬢は話も聞かずに追い返そうとする。それだけひどい姿なのは分かっていたけれど、いくらなんでも失礼な気がする。
「私は鏡谷 匡介の妻、鏡谷 杏凛です。夫が倒れたと聞いてきました、彼に会わせてください」
そう言っても受付の女性はジロリと私を見るだけで、案内してくれる気はないらしい。それでもこんなに大きなビルに勝手に入って匡介さんを見つけることは出来ない。
私を無視して他の人と楽しそうに話す受付嬢にもう一度頼もうとした、その時……
「杏凛さん! 来てくれたんですね」
奥に設置されたエレベーターの方から大きな声で私の名を呼ぶ男性、彼はいったい誰? 驚いた私に駆け寄ってくる小柄な男性社員、何故かとても嬉しそうな顔をしている。
「杏凛さん! 鏡谷部長のところまで俺が案内します、さあ早く!」
「え? ええ、あの……あなたは?」
私の手を握るとグイグイと引っ張ってエレベーターへと押し込む男性。その強引さに戸惑いながらも彼が誰なのかだけは確認する。
だって私はこの人と会った事も無い、それなのに私の名前と顔を知ってるなんて……