桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「あ、俺は鏡谷部長の補佐で飛島と言います! こうして杏凛さんに会えて嬉しいです」
人懐こい小さなわんこを思い浮かばせるような笑顔の飛島君に、さっきの事でギスギスしていた気持ちが自然と無くなっていく気がする。
よほど匡介さんを慕っているのか、飛島君は私にためらいなく満面の笑顔を向けてくる。
「その、飛島君はどうして私を? 私たち初対面よね……?」
「ええと、一度はお二人の結婚式で。でも……杏凛さんの写真が鏡谷部長のデスクに飾ってあるので、俺は毎日見てましたよ」
……ああ、結婚式。契約婚だというのに匡介さんはとても盛大な式を挙げて私を戸惑わせた。その時に飛島君もいたのね。と、頷いてはっと気が付いた。飛島君は匡介さんのデスクに何が飾ってあると言った?
「私の……写真?」
「ええ。いつも自慢の妻だとか、美人で自分にはもったいないくらいの女性だ。儚げなところがあるから俺が守りたいとか、まあ随分惚気を聞かされてますね。ちょっと注意してもらえませんか、杏凛さん」
顔から火が出るとはこういうことを言うのかしら? あまりの匡介さんらしくない発言に私は自分の耳を疑いそうになった。まさか会社で自分の部下にそんな話をしていたなんて!
思わず両手で顔を覆って真っ赤になった頬を隠す。