桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「映画、ですか? いえ、私はあまり流行り物を知らないので……」
なぜ映画の話をしてくるのか、匡介さんは会話の内容を急に変えることがあるので私はまだ上手くそれについていけないでいた。
彼は私の返事を聞くとしばし考えるようなそぶりを見せて、スマホを取り出し操作し始める。
「あの、匡介さん? 私は今、この洋服について話をしてるのですが……」
仕事の事で何か連絡があったのならば邪魔しては悪いと思いながら、控えめに彼に伝えてみる。すると匡介さんはスマホの画面を私に差し出す様に見せてきて……
「今度の休みは二人でこの映画を見に行こう、君の服は……そうだな、これにするといい」
スマホの画面に映された恋愛映画のタイトルを驚いて見ていた私に、彼は一人勝手にその日の服を選んで渡してくる。
「匡介さん? あの、今私がしているのはそういう話ではなくて……」
「その次の休みは、水族館がいいか。だったらこれが良いだろうな。で、その次が……」
匡介さんは私の意見を聞かないで、次々と二人で出かける予定を立てていく。私にそれを断る暇さえ与えてくれないように感じた。
「二人で出かけるのにお洒落をして欲しい、そんな夫の願いを叶えてくれないか? 杏凛」
もしかして、匡介さんは私が遠慮しなくていいようにこんな事を? とても分かりにくい優しさだけど、その言葉に少しだけ心の奥が温かくなってくる。