桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
私は匡介さんのその行動の意味を察して、顔を上げて瞳を閉じた。きっと涙でメイクだってボロボロに崩れてる、それでも今この時はきっと何より大切な瞬間になるはず。
心臓が破裂するんじゃないかってほど、ドキドキしてるのにその時が待ち遠しくてたまらない。
「杏凛」
今までで一番優しい声でそう呼ばれて、胸がキュウッと痛くなった。こんなにも幸せで胸が苦しいことがあるなんて今まで知らなかった。
そうしてゆっくりと唇が重なる。やはりちゃんと食事をとってないせいか、匡介さんの唇はカサついていた。想像していたのよりも柔らかな匡介さんの唇が何度も離れてはまた触れる。
……こういうのバードキスっていうんだっけ?
その遠慮がちなキスが匡介さんらしくて、私はもう少しだけ欲張りになる事にする。強請るように彼のシャツを両手でつかんで引っ張ってみせた。
そうすれば匡介さんが私の願いに応えるようにキスを深くしてくれる、お互いの気持ちが通じ合い初めてのキス、それは結婚式で交わした味気ないものとは全然違っていた。
……好き、誰よりも匡介さんが大好きだから。もうこのまま時が止まってしまえばいい。
……結局私たちは会社の終業時間まで、そのまま何度もキスを交わし合っていた。